同じ思いに結ばれる
横浜雙葉で学び、巣立っていった人たちの多くが今、社会の中、世界の中のさまざまな場で人びととかかわりながら、自らに与えられた力を発揮しています。そこにはどこか同じ思いで結ばれた卒業生の姿があります。
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61回生
エッセイスト
フランス語翻訳家伊藤 緋紗子
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12年間通った横浜雙葉学園で学んだ全てのことは、私のその後の人生の中で常に光の当たる特等席を占めて来ました。社会に出て、仕事や人間関係の難しさも知りました。いくつかの選択もせまられました。そんな時の私の唯一の味方は、自らの価値観に基づく判断力でした。直観力にも助けられましたがその力の基礎は、この学園時代に養われたものだと思います。実際、国の内外を問わず何人かの人生の先輩が口を揃えて、人間にとって一番大切なことは“教育”と語るのを何度も耳にしました。今、改めてそのことを実感しています。
もう一つ、社会に出て、お会いする方々が、横浜雙葉学園出身あるいは、雙葉の姉妹校であると知った時の嬉しさを何度味わったことでしょうか。数字や、目に見える要素ばかりを先行させる時代にあって、見えない物への信仰、つまりエレガンスを教えてくれた私の横浜雙葉での学園生活は、卒業後の人生に必要な精神性という武器を与えてくれた気がするのです。
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80回生
アナウンサー渡辺 真理
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横浜雙葉学園で得たものをたずねられた時、正直に答えると、それは言葉にするのは難しいものかもしれません。言葉を仕事にする職業に就きながら力量不足は否めないのですが、言い換えると、条件のように箇条書きにできないもの。進学率や立地・環境、先生と生徒の割合、制服の良さなど学校に求められる希望は多岐に渡ります。けれど、今でも辛い時にそっと覗きに行く自分のなかの引き出しには、雙葉で過ごした時間そのものが詰まっている気がします。なぜか分からないけど厳しかった当時の校則、友達との放課後のたわいない話、山手の丘への長い階段の通学路、視聴覚教室で先生に叱られた時間。社会に出て功利的に役立つ何か以上に、端切れのような思い出が自分を支えてくれる理由は、優しく強い大人になってほしいという先生方や学園全体の祈りにも似た空気が子供たちを包んでたからかもしれない・・・と、卒業して30年近く経とうとしている今、感じます。それが、表記しがたい伝統、目に見えない精神なのかもしれないと感じています。そして、同じように今、横浜雙葉で過ごす生徒たちがどうか幸せでありますように・・・と同窓生の一人として私も心から願い、祈っています。
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96回生
医師 呼吸器内科榊原 里江
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私は現在、都内病院に呼吸器内科医として勤務しています。私たち医療者の仕事は、病気を診るだけではなく、病気と闘う患者と、一人の人間として向き合うことであるように思います。ときに、患者の行き場のない怒りや苦しみも、診断した医療者は受け入れ、ともに闘う覚悟が必要です。そんなとき、いつも私の支えとなるのは、雙葉で学んだ、「徳においては純真に 義務においては堅実に」という校訓であり、人間の哀しみを理解し、それでもなお愛してくださる、イエス様の教えです。
私は在学中に、学園百周年の節目のときを、多くの方と共有しました。ニコラ・バレ神父様やマザー・マチルドの信念のもと、先生方や卒業生によって、刻まれてきた横浜雙葉の長い歴史。私も一人の卒業生として役割を果たすことで、この歴史の1ページをともに刻むことができたら、と今思いを新たにしています。